研究概要 |
平成6年度は、電磁面積計のキャリアを96k,98k,100kHzの3周波数に分け、3チャネル化した。試作した面積計を用いて大動脈弁計測実験、乳頭筋計測実験を実施した。大動脈弁実験:ペントバルビタール麻酔下の雑種成犬を人工心肺を用いた体外循環下に上行大動脈基部を切開し、数本の25μm径のポリウレタン線を左室流出路周囲、大動脈弁付着部(弁輪)、弁の辺縁(弁口)の3カ所に縫いつける。体外に設置した送信コイルからキャリアを送出し、縫いつけた導線を受信コイルとして、受信コイルの面積と信号強度が比例することを利用して面積計測を行った。カテーテル先端型血圧計で左心室圧、上行大動脈圧を計測し、弁下流約1cmの部位に装着した超音波トランシット型血流計を用いて心拍出量を計測した。結果:手術手技が難しく3カ所の同時計測には成功していない。左室流出路は弁の開口前には拡大し、収縮末期に縮小すること。弁は左室圧と大動脈圧の圧較差によって開くとされているが、左室圧が大動脈圧より高くなる前に開き始めることなどが示唆されている。しかし、十分なデータを得たわけではなく、今後の実験結果を積み重ねる必要がある。乳頭筋実験:雑種成犬より左室乳頭筋を摘出し、ポンプを用いて血液灌流標本とする。電気刺激を与え、乳頭筋の断面積変化、収縮距離の変化、収縮力の変化を計測した。その結果、筋肉の収縮力の変化は、一般的に用いられる指数曲線よりも2重指数曲線F(t)=C0-C* exp[-a* exp(-b* t)]を用いて近似する方がより相関が高くできることが判り、米国生理学会誌に報告した。
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