研究概要 |
既に、我々は人工境界脂質DDPC(1,2-dimyristoylamido-1,2-deoxyphosphatidylcholine)を用いて赤血球膜状に存在する膜糖タンパク質や膜酵素を効率よくリポソーム上に転移再構成させることが出来ることを報告した。この脂質は、長鎖アルキル基と極性コリン基の間に水素結合形成可能なアミド結合を有していた。このアミド結合はリポソームの安定化を促すと共に再構成させたタンパク質の安定的な保持にも役立つことが明らかとなった。 そこで疎水性残基と極性残基をバランス良く構築し、しかもタンパク質等との親和性をより効率よくするために、新規脂質として、PEGを有するポリベンジルグルタミン酸を合成した(以下、PBLG/PEG/PBLGと略称)。このブロックポリマーは、キャスト膜あるいはLB膜作成に際して疎水性ドメインと親水性ドメインがそれぞれ集合化する傾向にあり、また、ベンジルグルタミン酸部位はヘリックス構造を取ることも示唆された。さらに、LB膜を作成するとこのLB膜中にタンパク質や肝細胞に特異的に相互作用するアシアロ糖タンパク質モデルとして開発された糖鎖含有ポリスチレン(PVLA)などが簡単に再構成できることが明らかになった。特にPVLAを再構成したPBLA/PEG/PBLGのLB膜は、ラット肝実質細胞を短時間で効率よく接着させることが可能であり、また、そのまま安定に培養を継続することも可能であった。 また、PEGの片末端に肝細胞が特異的に認識するガラクトース残基を、もう片方にポリベンジルグルタミン酸を有する新規合成脂質は、キャスト膜を作成し上記と同様に肝細胞を相互作用させると非常に効率よくしかも、糖鎖特異的に肝細胞を接着させることが可能であった。 従って、これらのシステムでは、新たな人工脂質を新しい人工肝細胞用材料として有効に利用することが可能であると考えられた。
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