本研究は、家族の内から外へと外部化されつつある育児や介護といった対人サービス労働が、地域社会を舞台としてどのように組織化されつつあるかを把握することを目的としたものである。また、そこでの主要な担い手である女性の意識や実態を理解することもめざした。そして、名古屋市とその周辺市町村において、以下のようなインタビュー調査と質問紙調査を実施した。 (1)名古屋市行政による公的ホームヘルプサービス事業の変遷をたどるとともに、そこでの対人サービス労働の担い手である女性ホームヘルパーを対象とした意識と実態に関する調査 (2)名古屋市を含む愛知県内の22の住民参加型在宅福祉サービス団体を対象として、対人サービス活動の実態や組織運営等の課題に関する調査 (3)ファミリーサービスクラブを運営している名古屋市地域婦人団体連絡協議会に所属する地域婦人会の役員を対象とした地域活動の実態や男女共同参画についての意識に関する調査 以上の調査結果を分析・整理したことで、地域社会を舞台として対人サービス活動をおこなっている福祉マンパワー組織の現状や問題点、そこでの対人サービスの担い手である女性の位置づけや意識を把握することができた。「地域社会を舞台とした福祉マンパワー組織が安定した福祉サービスを提供できるようになるための方策を把握すると同時に、福祉領域における女性労働の望ましい社会的・経済的・文化的評価システムの確立に寄与すること」という当初の目的には到達できなかったものの、今後さらなる調査を行ってその目的を達成したいと考えている。
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