従来、経済活動の場としての市の研究はあるものの、市の守護神である市神や市祭に関する民俗学的研究はほとんどない。商いの神、都市の神としての市神の実態は不明であるといわざるをえない。本研究においてはイチ・マチ・マツリの相関関係を視野に入れた問題設定を行ない、以下のような成果を得た。東北地方を中心に(福島県磐梯町恵時・会津若松市大町初市・会津坂下町初市・奈良県桜井市大神神社摂社恵比寿神社初市)、大正月から小正月にかけての初市の調査(参与観察・聞き書き)を行なった。近世記録と伝承より、市神前の初市において、米価を占って決定する習俗を確認することができた。そこには、神の意思という形をとりながら生産者・消費者双方を納得させる意味がある。北九州地方における祭礼市の典型として、放生会の市立ての調査も行ない、その芸能・儀礼のモノグラフを作成中である。
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