本研究の目的は、人口の高齢化につれて、年金問題が大きな社会問題として注目されている現在、年金資産の受託運用機関である信託と生保について、年金市場、とりわけ厚生年金基金保険市場における競争の実態を検討することにより、今後の政策運営のためのインプリケーションを提示することであった。 研究期間は2か年であり、実施した研究から得られた成果は以下のようである。 1.年金業務と年金資産の運用に関して、生保会社に比べ、信託銀行が主要な役割を演じている 2.生保会社も信託銀行も、所属企業集団と深く係わりながら、年金業務と年金資産の運用を行なっている。 3.生保会社は、保険取引(年金業務)と金融取引(資産運用業務)を関連させながら、統一的な事業運営を行なっている。 4.企業集団に属する生保会社の行動は、経済合理性から説明できる部分が小さく、集団による影響を深く受けているようである。 企業集団の再編が激しい中で今後、年金問題を考える際には、集団との係わりを深く検討することが、重要になると思われる。
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