研究概要 |
静岡県掛川地域および三浦半島の上部新生界に分布する年代の異なる現地性シロウリガイ類群集を選択し,化石密集層内部および周囲から産出する底生有孔虫群集について産状・種構成から,底生有孔虫種の分布と湧水環境との関係を考慮した.産出した底生有孔虫について因子解析した結果は以下の通りである.1)Bulimina aculeataとRectobolivina striata curtaは,酸化的環境の堆積物表層に生息する.両者の分布が異なるのは,前者は底層水にメタンが含まれるアルカリ度の低い環境に,後者はメタンが含まれないアルカリ度の高い環境に適応しているためと推定される.2)メタンが含まれる底層水の影響を受ける堆積物表層において,間隙水のアルカリ度の低い酸化的環境にHyalinea balthica,Nodosaria longiscataおよびStilostomella lepidulaは分布し,アルカリ度の高い貧酸素環境にBulimina striataおよびNonionellina labradoricaは生息する.B.striataは硫化水素の影響を受ける.3)Chilostomella ovoidea,Cibicides aknerianus,Cibicidoides mediocris, Globobulimina pacifica,Hoeglundina elegans, Oridorsalis umbonatus,Rectobolivina cf.asanoi,Rectobolivina columellarisおよびUvigerina peregrinaは,堆積物内部に生息する.4)メタンに富む間隙水にO.umbomatusおよびR.cf.asanoiは特徴的である.前者はアルカリ度の高い貧酸素環境に,後者はアルカリ度の低い酸化的環境に分布する.5)H.elegansおよびU.peregrinaは,間隙水にメタンを含まず酸素に乏しいアルカリ度の低い環境に生息する.6)R.columellaris,およびG.pacificaは,間隙水にメタンが含ないアルカリ度の低い貧酸素環境に多産する.7)C.aknerianus およびC.mediocrisの生息域は,メタンが無いアルカリ度の高い間隙水の影響下にある酸化的環境である.
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