研究概要 |
トップロ-ディング式断熱型熱量計を開発に成功した。テスト実験として空の試料容器と標準物質である安息香酸の熱容量測定を行った結果,12-380Kの温度領域で,およそ0.1%の正確度の熱容量測定が可能であることが分かった。この温度範囲,正確度は,通常の断熱型熱量計と同程度である。 tri-O-methyhl-β-cyclodextrin (TMCD),sucrose (SUC),salicin (SAL),phenolphthalein (PP),1,3,5-tri-α-naphthylbenzene (TNB),p-quaterphenyl (p-QP),p-terphenyl (p-TP),1,3,5-triphenylbenzene (TPB)などの有機分子性結晶(T_gは室温以上)の粉砕非晶化能を粉末X線回折と示差走査型熱量計(DSC)を用いて調べた。液体急冷ガラスの非晶化能と粉砕非晶質の非晶化能には強い相関があることが分かった。 TMCDとTNBの粉砕非晶質と液体急冷ガラスの熱容量を5-380Kの温度範囲で精密測定した。その結果,粉砕非晶質は液体急冷ガラスよりはるかに大きい構造エンタルピーをもつことが分かった。このことは分子性粉砕非晶質が配向無秩序,局所ひずみ,欠陥の大きい状態であることを示している。非晶性物質の特徴である低エネルギー励起の強度は,液体急冷試料より粉砕非晶化試料で大きいことも明らかになった。 TMCDを用いてエンタルピー緩和の粉砕時間,粉砕温度変化について調べた。この実験結果から,分子性結晶の粉砕非晶化過程,構造エンタルピー獲得過程には,単に結晶と液体の自由エネルギー差や構造緩和時間のみならず,結晶(および生成した非晶質個体)の機械的性質(例えば可塑性)が重要であることが明らかになった。
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