研究概要 |
本研究は,オキソアセタト架橋ルテニウム三核錯体[Ru_3(μ_3-O)(CH_3COO)_6(L)_3]^+を基本ユニットとし,ターミナル配位座(Lの位置)に架橋配位子ピラジンを配位させ,分岐的・逐次的に多量化を行い,金属錯体デンドリマ-とみなせる分岐状4量体や10量体の合成を目指したものである。この目的を研究計画に基づいて遂行するために,最初に,(1)三種混合配位子錯体[Ru_3(μ_3O)(CH_3COO)_6(H_2O)(CO)(py)]の合成,(2)酸化的脱カルボニル反応の方法について詳細な研究を行った。これらの成果により,三核ユニットを一つずつ伸長させる逐次多量化が可能となった。この方法を利用して,Frechetらの有機デンドリマ-合成法に基づき4量体[{Ru_3(μ_3-O)(CH_3COO)_6(py)_2(pz)}_3-{Ru_3(μ_3-O)(CH_3COO)_6(py)_2}]^<4+>の合成に成功した。より高次のデドリマ-合成研究は現在進行中である。4量体の電気化学的挙動をCV法により調べた結果,分子構造を保ったまま少なくても16個の電子を段階的且つ可逆的に授受できる系であること,また,中央の三核ユニットは周辺のユニットよりも対応する酸化還元電位が正側にあり,分子内に電位勾配が存在することが明らかとなった。
|