研究概要 |
報告者は、反応性に富んだ有機溶媒を組み合わせて用いると、系中でキレート化合物が生成し抽出試薬無添加で金属イオンが有機層に抽出できる、という新しい概念に基づいた溶媒抽出法の開発をめざして研究を行ってきた。この2年間の研究期間で挙げられた成果は第一に、系中でサリチルアルドキシムを生成する新しい混合溶媒系(サリチルアルデヒド-エチレンジアミン-クロロホルム混合溶媒)が開発できたことで、これは日本化学会第69春季年会において報告した。第二に、従前より検討していたアルコール-アミン-二硫化炭素混合溶媒系については、n-プロピルアミン-シクロヘキサノール-二硫化炭素混合溶媒系で抽出条件や反応機構を確立し、全体像が明らかになった。すなわち、第一級アミンと第二級アミンを含む混合溶媒系ではジチオカルバミン酸が生成し、第三級アミン混合溶媒系ではキサントゲン酸を生成することが明らかになった。これらの成果については、昨年10月日本化学会中国四国・同九州支部合同大会において推薦講演で発表する機会が与えられた。第三にその他として、0-フェニレンジアミンのクロロホルム溶液を亜硝酸イオンを含む水溶液と振り混ぜると、水層中に1,2,3-ベンゾトリアゾールが生成することが確かめられており、金属イオンが抽出できる可能性があること、またサリチルアルデヒド-エチレンジアミン-クロロホルム混合溶媒系では、N,N'-ジサリチリデンエチレンジアミンが生成すること、同混合溶媒を用いると広いpH範囲で同(II)イオンが抽出されること、などが明らかになった。以上の結果は、まとめてISEC'96(於:メルボルン/オーストラリア)で発表した。研究の詳細は、別添冊子を参照下さい。
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