研究概要 |
本研究は私と共同研究者によるDactylella tylopagaの菌糸隔壁が、ほとんど平らで無孔のかっこ体をもつドリポア型であったという発見から出発した(Saikawa et al.,1994,in Mycologia)。なぜならこのタイプの隔壁構造はそれまでラン科植物の菌根菌として知られるTulasnellaとSebacinaの構造と一致したからである。よって本研究ではラン科植物の菌根や、その根圏から出現した菌類にアメーバを与える実験を行った。もし、それらがアメーバを捕食すれば、なぜランが根にカビをもつのかがわかるからである。成長した後のラン科植物の菌根菌の役割はいままでのところ不明である。しかし、残念なことに出現した菌はどれも、D.tylopagaのものよりかなり太い菌糸をもち、菌糸のどの部分においてもアメーバを捕食しなかった。このようにアメーバ捕食については見込みがはずれてしまったのである。しかし、私は本研究のラン科植物の採集旅行において採集した種々の基質から注目すべき多数の菌類を得、その生態学的形態学的観察結果をMycologiaやCanad.J.Bot.などの雑誌に載せることができた。
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