研究概要 |
1)高速波形観測: 本補助金による高速デジタルストレージスコープが入荷し,高速プリアンプ等を加えて,マイクロ破壊の際の光パルスの波形を観測した。鋼で半値巾8ns,石英で同15nsのパルスである.この光を熱放射によるものとし,固体表面で,厚さ0.1μm,径5μmの薄い層が瞬間加熱されたときの熱伝導冷却曲線のモデリング計算を行ったところ,実験結果に一致した.これから,数〜30μmのマイク口破壊の際には約300原子層が瞬間加熱されていることになる.立ち上がりは,1〜数ns程度であり,これは,破壊層にクラックの走る時間に相当するようである.このように,マイクロ破壊の初期過程に関する知見を得た. 2)バンドパスフィルタその他による分光: 破壊の瞬間,すなわち10ns以内の発光のスペクトル測定を試みた.このためには積算型の分光器では駄目で,バンドパスフィルタによるものを製作し,短パルスを拾うという方法によった.Fe,Mo,W,等の金属では,赤〜赤外域の連続スペクトルでその物質の融点からそれ以上の色温度を得た.石英,水晶では,連続スペクトルに加えて,300nm帯に輝線スペクトルらしい強い発光を見いだした.瞬間に,10,000℃以上の状態になっているらしい. 3)力学エネルギー集中のメカニズム: 300nm帯に発光を示すという予想外の結果であり,メカニズム解明のためには,物質による差,力学条件,等今少しのデータが必要となった.また,300nm以下での発光,つまり,さらに高温の可能性もある.予想外のエネルギー集中の解明には,引き続いての実験が必要であろう.
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