研究概要 |
はじめに,射出およびスタンピング成形された短繊維強化FRTPの静的及び疲労特性に及ぼす母材(主としてポリプロピレン(PP))と強化材の界面特性の影響について調べた.その結果,長繊維ペレットを用いた射出成形FRTPの静的強度はいずれも短繊維ペレットの射出成形FRTPより約80%静的強度が向上することがわかった.また,降伏点にも改善が認められた.しかし,剛性は静的強度ほどに増加しなかった.射出成形により繊維が破損するため,ペレット中の繊維長は8〜10mmあれば十分である.一方,長繊維ペレットを用いたFRTPの疲労強度は低サイクル寿命領域で,短繊維ペレットFRTPより30〜80%高いが,高サイクル寿命領域ではその差は僅かとなり繊維長の疲労強度に及ぼす影響は小さくなることがわかった.また,PP母材中の繊維が長いことにより,クリープ変形に対する特性が大幅に改善される.さらに,PP母材はほとんど吸水しないが,ガラス繊維と複合させることでFRTPの吸水能が高くなること,母材とガラス繊維の界面で吸水されることもわかった.この吸水によりFRTPの静的引張り強度,疲労強度はともに低下する.しかし,吸水による静的強度の低下は20%程度と少ない.ガラス繊維と接触する側のPPシート表面を低温プラズマにより処理し,繊維との親和性を高めることにより,安価で強度特性の優れた熱可塑性樹脂を母材とするFRTPの製造の可能性を示した.この処理により,はく離強度は50%,静的強度も約20%の向上が確認された.さらに,FRPについても,母材樹脂を変性することにより,強化材との界面特性が改善されることから,エポキシ母材に超微粒子ゴムを混入し,FRPの静的および疲労強度の向上を図った.繊維/母材間の界面特性の改善と母材の高じん性化によりCFRPの静的および疲労特性が大幅に改善されることが示された.
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