本研究では時間と共に変化して行く流れの立体構造と流れのスイッチング現象をとらえることが出来た。この研究では流れの断面構造を可視化し、その断面の位置を次々の変えて行くためにスリットカートリッジを装填したスライドプロジェクターを水路上に載せてモーターとクランク機構によって主流方向に往復運動させて、ライトシートによる可視化断面を移動させた。ここでは、ウラニン色素注入による可視化を行なったが、CCDカメラでの光量が不十分であったため、CCD素子前面に設置されていた赤外線フイルターを取り除き、光感度を上げる工夫をした。渦放出周期が約20秒で、ライトシートの掃引時間が約0.7秒で実験を行なったために、得られた立体画像の時間解像度は渦放出周期の約3.5%、空間解像度は主流方向に約21断面となった。また、供試物体に三角錐を用いたことにより、物体背面円周の剥離線付近までの流れ場を観察することが出来た。また、立体画像は同一時刻における3つの異なった方向からの画像を並べて生成し、通常の可視化写真よりも遥かに立体構造が分かりやすいようになった。 実験の結果、次のことが分かった。(i)スプーン型渦が一方向に規則正しく放出されるレイノルズ数(約250)では可視化観測されるVortex Loopは弱く、2本の下流に伸びる糸状の渦が流れを支配している。(ii)渦の放出方向が間欠的にスイッチングを起こすレイノルズ数(約300)では2組の2本の縦の巻き込みの強さが不均等になって放出方向のスイッチングが起こることが分かった。(iii)渦放出の方向が回転すると言われて来たレイノルズ数(約570)では、流れの不規則変動によってウエークがネジレて、あたかも回転しているように見えることが分かった。
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