研究概要 |
本研究は,サイクロトロン加速器において,ビーム断面電流強度分布の中心位置や形状を監視調整するために,4方向から計測した投影データを用いて,ビーム断面の電流強度分布を計算機により実時間で再構成する方法を開発しようとするものである.1年目は,再構成される画像の分解能を上げる方法を開発した.ピラミッド階層化を図る方法について,仕組を考案しプログラムを作成し,計算機によりシミュレーション実験を行ったところ,良好な画像再構成が得られた.その概要は,最上層の画像領域において大まかな画像を再構成し,得られた画像から一つ下層の分割された画像領域での投影値を行列掛算により求め,透過線上での比例配分により分割された各画像領域での投影値を推定算出する.この操作を繰返し行って,最下層での画像を求めるというものである.64×64のモデル画像化行列を用いて,4方向投影により実験したところ,128×128の良好な画像が再構成されることを確認した.2年目は,岩手県工業技術センターのX線装置を借用して,実際のX線によって画像が再構成されることを確認した.物体を回転させ各方向の投影データを測定し,計算機へ送り込み,その投影データより物体の断面画像が再構成されることを実験的に確認した.物体としてはLED素子やコンデンサー等の電子部品を用いた.投影方向数は8方向であり,投影間隔は,標本点間隔の0.5倍で,1276本の投影データから64×64の4096個の画素値を計算した.再構成された画像はほぼ良好であり,再構成の計算時間は約0.2秒と高速であった. 本研究の手法は,見えない管内部の断面濃度分布パターンを,少数方向の投影から,簡単に,しかも高速に,画像再構成して計測する,新しい「濃度分布パターン計測法」として,実用化できる可能性が充分にあることが明らかになった。
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