研究概要 |
1.はじめに 覚醒レベルと開眼状態や脳波等の生理的パラメータとの関係を定量的に明らかにすることは、学術的に意義深く、また居眠りによる事故防止等に応用できる。本研究では、開眼状態の指標として瞬目回数、開瞼度、眼球運動量を、生理パラメータとして脳波、心電図を解析し、ねむけ度との関係について検討した。 2.実験方法 自動車運転を模擬したビデオ映像を被検者(健常成人9名)に見せ、開瞼度、瞬目回数、眼球運動、脳波(O_<Z->C_Z、C_<3->C_Z)、心電図、自己評価法によるねむけ度(KSS値)を記録した。記録は深夜に、1セッションを15〜20分とし、5〜10分の休憩を挟んで4セッション、昼間時に1セッション行なった。脳波はδ,θ,α,β各帯域について%パワーを、心電図は心拍数とそのばらつきを調べた。 3.結果と考察 瞬目回数はKSSの増加と共に値が増加し、更にKSSが増すと逆に減少したが、個人間でのばらつきが大きかった。開瞼度はKSS値が4.7程度までは覚醒時とほとんど変わらないが、それ以上になると急激に減少した。眼球運動量はKSSが増すと減少したが、減少のしかたは開瞼度に比較して直線的であった。脳波については、%αはKSSが増すにつれて値が増加し、増加の程度もKSSが増すほど強まった。%δはKSSが4.5以上で減少する傾向がみられた。KSSが4.7以上の場合、開瞼度の減少が強まったが、このとき脳波では%αの更なる増加、%δの減少が見られた事から、開眼状態との間に相関関係があることが考えられた。%β、%θには有意な変化はみられなかった。心電図のR-R間隔とそのばらつきの程度はKSSが増すにつれて増加した。以上の結果から、1)開瞼度は強いねむけの指標となる、2)%αはねむけ度をよく反映する、3)脳波及び心電図の特性変化と開眼状態との間に相関関係があることが示唆された。
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