今年度は以下のような成果を得た。 (1)今年度は10^<-13>Tの分解能を得るために、種々の磁性材料の励振条件、すなわち励振振幅、励振周波数、動作磁界レベル、励振回路のインピーダンス等に対するコアの動的な磁化過程とコアで生じる雑音発生のメカニズムを明らかにし、雑音の影響を受けない励振法を確立した。すなわち、磁気センサの検出下限は、極論するとセンサ雑音の大きさで定まりセンサ雑音を小さくすることは直接高感度化につながる。センサ自身の雑音を大別すると、センサコアすなわち、磁性材料に基づく成分と電子回路から発生するものとになる。検討する磁界センサは、検出原理に磁化特性の増分透磁率を用いているため、高角形磁化特性を有するアモルファス磁性材料は、感度的には有利と言える。しかしながら磁化過程からみると、この種の材料に特有と考えられる雑音の問題がある。またスーパーマロイは、角形比ではアモルファスに及ばないものの極めて微小な磁界に対しては逆に柔磁化特性を示すことを確認している。考えている被検出磁界の大きさは10^<-13>Tと極めて微弱であるため、センサに適するコアを厳密に選定する必要がある。 (2)電子回路雑音のメカニズムを明らかにし、10^<-13>Tの検出を可能にする低雑音増幅器の実現を目指して検討した。現在センサの増幅器としては、アンプの並列接続、アンプ自体の高帯域化による等価同相去比の向上、バンドパスアンプの挿入、アンプを動作する環境としての定温度動作等により低雑音化を実現し、10^<-12>Tオーダの検出感度を得ている。しかし、10^<-13>Tの感度を得るには、更に低雑音化しなければならない。これは、アンプに用いる抵抗の熱雑音が問題になるレベルであり、これには統計処理を含めた増幅器の適用を考えている。 (3)以上の成果をもとにSQUIDの1/10に迫りうる感度を得て、磁気シールドの施された場を想定して実際に人体から生じている磁界の検出可能性を探り、提案するセンサとシールド装置の有効性を明らかにする予定である。
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