研究概要 |
本研究は,ニューラルネットワークによって貯水池への流入量予測の実用化を図ろうとしたものである。愛知用水の水瓶である牧尾ダム流域における冬期の日流量の予測を計算対象として行った研究の成果を,大きく二つに分けて以下に示す。 1.流入量予測のためのニューラルネットワークの構造選定について 翌日の日流量を目的変数,観測された前2,3日までの日流量,および前6日までの日降水量を説明変数とした予測を,入力層,中間層,出力層の階層型ネットワークで行い,入力層,中間層のユニット数を変化させたモデルについて,AIC,BIC,MDLの3つの評価基準によりモデルの選定を行った。その結果,今回用いた情報量基準によってネットワーク構造の選定が可能であり,AICではユニット数が多め、MDLでは少なめ,BICでは両者の中間的なモデルが採択される傾向があることが示された。また,学習データに対してはAICによるモデルの採択が,未学習データに対してはMDLによるモデルの採択が適切であることが分かった。 2.流入量予測の推定精度に関する実証について 1969年〜1991年のデータを対象に,前データのうち1年分を除いた教師信号として学習させたネットワークで,除いた1年分の日流量を推定し,推定値と実際のデータとの比較により推定精度を検討した。その結果,実際のデータとの相対誤差で約25%の精度が得られ,データと推定値との相関係数も約0.65と高く,ニューラルネットワークにより日流入量の予測が可能なことが実証された。
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