研究概要 |
本研究では,構造物の合理的な建設や解体,展開型構造物等への応用を前提として,一般的な骨組構造の畳み込みについて研究を行った。形態は主にドームなどの空間構造骨組を対照とした。一連の本研究により,以下の約5点の新しい知見を得た。 1,初年度を中心に行った既往の研究調査の結果,従来は特定の構造システムの提案という形の研究が圧倒的に多く,本研究のような一般的な骨組みの畳み込みについて論じる研究は皆無に等しいことが確認された。 2,初年度より開発した骨組み構造物の畳み込み解析は,幾何学的計量の導入,最小変位アプローチによって不安定状態でも数値計算は安定して行われ,この種の計算として非常に効果的であることが分かった。上記下線の2つの量の設定により異なる変位経路同士の比較を行うことが可能となった。 3,畳み込み解析の例題を通じて,この問題は広義の大域的最小化問題であることが確認できた。とくに,畳み込み過程と展開過程の解析結果は必ずしも一致しないことが分かった。 4,畳み込み解析の途中では,分岐点に出会うことがあることが判った。分岐点の扱いとして,変位の高次項の利用,群論を用いた対称性に基づく理論の応用等を試みた(Maras96 国際会議投稿中)。これらは特定の場合には効果的であることが分かったが,一般的な扱いについては今後の課題である。 5,解析手法の妥当性を確認する為に,グリセリン中の準静的な落下運動を測定する実験を行った。その結果,畳み込みの計量を準静的落下と等価になるように設定した場合,解析結果と実験結果は概して良く一致することがわかった。これより,開発した手法の妥当性が実験により裏付けられた。
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