研究概要 |
本研究の概要は以下の3項目にまとめることができる。 1.本研究の課題抽出のために,福祉の街づくり施策による要網等の内容,具体的な整備の実態,高齢者・障害者の利用上の問題などを調査した。その結果,特に道路などの公共空間では,設備の大半が要綱の部分的な対応に限られ,公共的建築物の基準の準用が多く,各整備対象項目を連続的に結びつけるバリアフリー環境形成にまで至っていないこと。また連続的なバリアフリー環境形成のためには,高齢者の屋外生活特性の検討および公共空間を構成する環境装置の整備実態の検討が研究課題であることを導いた。 2.高齢者の屋外活動生活の特性を検討するために,一般的な外出特性および外出時に利用度が高いバス利用に関する実態調査を行った。その結果,徒歩および公共交通機関による外出が多く,高齢者の歩行機能の低下が起因した移動上の問題点が多く指摘され,現状の歩行環境の不連続性が重大な課題であることなどが明らかになった。 3.都市内街路の環境装置類の整備実態の検討のために,福岡市内主要街路の環境装置の種類や量,分布状況を調査・分析し,環境装置類の配置特性を抽出し,幅員や周辺環境特性の関係などについて考察した。その結果,周辺環境特性や整備レベルなどの違いが環境装置の種類や量,分布など配置特性に影響していること。また共通した課題として各環境装置が互いに関連なく個別に設置されていることなどが明らかになった。 以上の研究の結果,高齢者対応の都市内環境装置のあり方は,安全かつ快適な連続性のある歩行環境を形成することであり,そのためには各環境装置の関係性の明確化,配置方法の秩序化および序列化が必要であり,環境装置による歩行環境の個性化には周辺の地域特性を取り込むことが重要であることなど,今後の研究の基礎的な指標を導くことができた。
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