1、文献研究 広義の言語的空間を、日本においてほぼ同時期に成立した、古今集的世界と密教的世界とを比較考察することによって、その両者が各々独自の抽象性に基づいて新たな空間を産み出したことが明らかにされた。さらにその両者はともに別々の仕方で人間-自然共生システムとして捉えうることが判明した。 2、フィールドワーク、アンケート調査 多くの密教寺院をフィールドワークし、自然地理的状況と寺院建築との相互関係を探り、そこに幾つかのパターンを見いだした。しかし、それは単に地形的関係に留まらない。関係の潜在的構造を解明するために、「気」という関係項を作業仮説として立て、全国の気功団体にアンケートすることによって、一般人には捉えられない気のエネルギーの観点から寺院建築と自然地理的状況の場所的関係性を探った。また、密教に関わる修行のプロセスを可能な限り参与観察し、人間-自然共生関係の変容過程を捉えることができた。 3、以上を総合して次のような新たな知見を得た。 (1)内部空間を新たに定義し直すことによって、西洋世界、西洋建築とは異なる独自の空間性を古今集、密教の中に見いだすことができる。 (2)意識のあるrelaxationのもとで、古今集的共生の世界が開かれ、非在の自然美が様式化される。そのためのインスタレーションの構造も分析された。 (3)意識のmeditationのレベルにおいて密教的共生の世界が開かれ、意識化の自然性が開発される。そのためのインスタレーションの構造も分析された。
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