研究概要 |
炭化水素熱分解反応により析出する炭素を炭素繊維あるいはSiC繊維間に充填し、高温強度を向上させる方法はCVIと呼ばれ、工業的に広く使用されている。本研究では炭素材の主に直系50nm以下の微細気孔(メソポア-,マイクロポア-,サブマイクロポア-)に充填することにより、機械的強度よりもむしろ耐酸化抵抗を上昇させることに主眼をおいた実験を行った。試料は各種炭材(コ-クス,グラファイト,木炭,活性炭)であり、炭化水素としてはメタンを選択した。これらの試料に炭素充填を行った後、CO_2により酸化し、反応前後の気孔構造の変化をN_2吸着法と水銀ポロシメータにより測定した。その結果、耐酸化抵抗の上昇は微細気孔を多く有する活性炭で顕しい効果を示し、気孔充填率約50%で酸化速度も約50%程度に減少することが分った。一方他の炭素材では酸化速度は10〜20%減少するに過ぎない。この酸化抵抗の上昇の原因は直径2nm以下のマイクロポア-に起因し、炭素充填の結果これらの気孔サイズは面積体積共に1/1000〜2/1000まで減少することが判明した。またCO_2による酸化反応の後にも気孔のサイズは、オリジナルの試料を同一反応率まで酸化させた試料で比較し、体積面積共に約1/3程度にまで押えられる。以上の実験事実から微細気孔の充填が酸化抵抗の上昇に大きな役割を果たしていることがわかった。高温冶金反応への応用では、コ-クスの高温強度の改良が期待されており、活性炭について得られた知見を冶金および成型コ-クスに適用して解析を行った。コ-クス等で酸化抵抗の減少が活性炭よりも小さいのは、コ-クスに含まれるマイクロ気孔の割合が小さく、炭素材の結晶構造よりも気孔の構造が大きな支配因子であることが結論された。
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