研究概要 |
1.大変形に重畳した微小振動応答より得られる微分動的弾性率(その実部は変形中のゴム域の高さに対応する)をプローブとする高分子濃厚系の絡み合い構造変化を様々な変形様式で観測し、次の結果を得た。 鎖収縮と絡み合い構造変化:絡み合い構造変化は長時間領域で非可逆であるのに対し、鎖の平衡化過程の緩和時間に比べて短い時間領域では可逆であることを見いだした。これより、絡み合い構造変化が大変形後の鎖収縮に起因することを明らかにした。 2.新規直交二軸レオメーターの試作と直交微分動的弾性率の観測:大変形と微小振動を独立に与えることのできる直交二軸レオメーターを試作した。これにより、きわめて高精度の直交微分動的弾性率の測定が可能となった。同装置を用いた測定より、変形初期のゴム域の高さの歪依存性が長時間領域での緩和弾性率の歪依存性と一致することを見いだした。したがって、大変形下での非線形粘弾性は絡み合い構造変化によると結論できる。 3.ずり速度ジャンプ法による絡み合い構造転移の観測:ずり流動開始後の応力生長と微分動的弾性率の測定より、粘度が線形生長するとき微分動的弾性率G'(ω,γ,t)は一定で、その値は線形貯蔵弾性率G'(ω,O)と一致し、高ずり速度においても初期の粘度が線形生長する領域ではG'(ω,γ;t)はG'(ω,O)に一致するが、粘度生長が非線形生長に移るとききG'(ω,γ;t)も低下しはじめ、非線形粘度生長に対応する絡み合い構造転移が観測された。さらに高ずり速度から低ずり速度へジャンプさせても、G'(ω,γ;t)は高ずり速度における値から変化しなかった。 以上の結果より、高分子濃厚系の非線形粘弾性と絡み合い構造変化の対応関係、ならびに絡み合い構造変化の非可逆性が明らかになった。
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