研究概要 |
この研究は,C_3植物の葉緑体のDNAをC_4植物に導入することを目的として始め,科内にC_3植物と_4植物を含むアカザ科あるいはヒユ科の植物を用いてそのための基礎的研究を行った.研究期間が2年間と短かったため最終的な結果は得られなかったが、アカザ科のホウレンソウに絞って研究を行い,無菌的な苗の作出方法(第2章),カルスの育成方法(第3章)および葉緑体DNAの分析方法(第4章)を確立した. プロトプラスト融合等に用いる無菌的な苗の作出は、ホウレンソウでは非常に困難であったが、2%の次亜塩素酸ナトリウムを用い、まず減圧条件下で30分間殺菌し、その後30分間撹拌し水洗する殺菌方法は,無菌的な苗の効率的な育成を可能にするだけでなく奇形率も押さえることを明らかにした. ホウレンソウの3つの品種を用い,第一本葉、子葉、胚軸および根からのカルスの作出を試みたところ,品種間及び用いた部位間に差が見られた.3品種の中では‘次郎丸'が、用いた部位では、根あるいは胚軸からのカルス形成率が優れた. ホウレンソウの葉緑体DNAの単離精製は比較的容易で,BamHI,EcoRI,PstIおよびApaIの4つの制限酵素を用いて消化し、アガロースゲル電気泳動に供したところ、葉緑体DNAと思われるバンドが得られ、雑種が得られたときの細胞質の特定に利用できるものと思われた.
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