研究概要 |
大腸菌K-12株由来のリポ酸要求性ピルビン酸生産菌を親株として、形質導入法によりF_1-ATPaseの欠損変異遺伝子atpA401を導入して得られたTBLA-1株では、生育は親株の70%に低下したが、菌体当たりのグルコース消費速度およびピルビン酸生産速度が親株の2倍および2.5倍に増大し、その結果ピルビン酸生産効率が大幅に向上した。平成6年度はTBLA-1株の性質を解明することを目的として検討し、次に示す成果を得た。 1.F_1-ATPaseレベルとピルビン酸生産効率との関連性の検討:TBLA-1株から親株の10%の活性を持つF_1-ATPaseの部分復帰変異株を取得した。この株のピルビン酸生産能は親株と同じであった。従って、ピルビン酸生産の効率化のためには、F_1-ATPaseがさらに低下する必要があることが分かった。 2.TBLA-1株における酸素消費量の変化:ピルビン酸生産培養時のTBLA-1株の酸素消費量は親株の1.7倍に増大していた。 3.電子伝達系のチトクロムb含有量の測定:分光学的な測定の結果、TBLA-1株では含有量が親株の3倍に増大していた。2.の結果と合わせて考えると、TBLA-1株では糖消費の増大の結果過剰に生成されるNADHを再酸化するために、これらの変化が起こったと考察された。 4.TBLA-1株における解糖系諸酵素活性の変化:glucose phosphate isomerase,phosphofructokinase,fructose bisphosphate aldolase,phosphoglycerate mutase,pyruvate kinaseの5種類の酵素活性について測定したところ、pyruvate kinaseの活性がTBLA-1において約50%増大しており、解糖系が活性化されていることが見出された。
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