研究概要 |
チトクロームP-450HP(P-450HP)はヒト胎盤cDNAライブラリーより単離されたP-450分子種で、cDNAの塩基配列からタンパク質一次構造が明らかにされているが、タンパク質としての性状は全く不明である。本研究ではP-450HPの機能解明のため、タンパク質一次構造のコンピューター解析およびP-450HPcDNAの発現と遺伝子構造の解明を試みた。1,P-450camで解明された基質認識部位を参考にP-450HPの6カ所の基質認識部位(SRS)を推定した。SRSの中で、著者らが脂肪酸ω水酸化酵素CYP4A6で、基質認識に重要な役割を果たしていることを指摘している58番目から123番目の配列に相当する部分にはSRS1が存在し、両者の間で68%のアミノ酸が置換しており、P-450HPは脂肪酸のω水酸化と異なる機能を有していることが示唆された。2,大量発現が期待できる大腸菌発現系を用いてP-450HPcDNAの発現を試みた。P-450HPcDNAのORF5'側を6、72および102bp欠失したDeletion mutantを作製し、大腸菌内発現を試みた。培養菌体から膜画分および可溶性画分を調製し、そのCO-差スペクトルを測定したが、P-450に特有なスペクトルは検出されなかった。3,P-450HPcDNAリーダー配列をAAAAAAに変更してpAAH5挿入したP-450HP発現ベクターをS.cerevisiaseSTR株に導入した。ミクロソーム画分のCO-差スペクトルを測定し、極微量の発現を確認したが、有為な触媒活性は検出されなかった。4,約8kbのP-450HP遺伝子をクローニングした。開始コドンの上流65bpにはTATAボックスが存在したが、他のP-450で見い出されている発現制御領域に類似する配列は存在せず、P-450HPが未知の様式により制御されていることが示唆された。
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