研究概要 |
我々は滅菌後の医療材料に残留したエチレンオキサイドが放出される濃度を経時的に測定し,作業室の環境汚染の影響を検討した。 滅菌行程中はエチレンオキサイドの作業環境濃度は検出できなかったが,滅菌が終了して被滅菌物を滅菌器から専用のエアレーターに移す時,4.2ppmのエチレンオキサイドを検出した。エアレーションの温度が室温(25°C)の場合は,被滅菌物に残留したエチレンオキサイドはエアレーションされていなかった。特に,塩化ビニール管では,エチレンオキサイドの放出濃度が5ppmになるまでエアレーションしても,それの残留エチレンオキサイド量は5,000ppm以上であった。 しかし,滅菌後に残留したエチレンオキサイドに対するエアレーション効果は,加温(60°C)と換気量の増加によって上がった。滅菌後,室温(25°C)で被滅菌物を作業室内に放置したが,作業環境濃度は作業基準値以下であった。しかし,滅菌後の塩化ビニール管を加温(60°C)して作業室内に放置した結果,作業環境濃度は8時間荷重平均で作業基準値の1ppmを超えた。 以上の結果から,作業者が滅菌器から被滅菌物を取り出す時,エチレンオキサイドに被曝する可能性がある。高濃度のエチレンオキサイドが残留している被滅菌物を作業室内に放置した場合には,残留したエチレンオキサイドによって作業環境を汚染することがある,ということがわかった。
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