研究概要 |
アルツハイマー型老年痴呆(SDAT)患者においてCu, Znsuperoxide dismutase (SOD)の検討を行ったところ, SDAT患者ではSODの蛋白量もmRNAにも異常を有することが明らかとなった.さらに,対照として検討した片頭痛患者の中にミトコンドリア遺伝子異常を有する1群が存在する可能性があることが明らかとなった.細胞内カルシウム変動の検討から,アルツハイマー型老年痴呆患者では細胞内情報伝達機構が傷害されつつある傾向があることが明らかとなったが,著明なものではなかった.またアルツハイマー型老年痴呆患者群では,今回検討したGTP結合蛋白の中のexon 8およびexon 9における明らかな遺伝子異常は認められなかった. これらのことから,アルツハイマーが他老年痴呆患者ではフリーラジカル除去機構に異常を呈するが, CTP結合蛋白のGsαのexon 8およびexon 9の遺伝子異常に起因するような細胞内情報伝達機構の著明な障害を有している可能性は少ないことが明らかとなった.今後はGsα遺伝子の他の部位の遺伝子異常の検討が必要である.また,アルツハイマー病では海馬のイノシトール三リン酸受容体の免疫組織染色による染色性の低下が認められており,イノシトール三リン酸受容体の異常に基づく細胞内情報伝達機構の異常が存在する可能性は否定できない.すなわち,イノシトール三リン酸受容体遺伝子異常がアルツハイマー病にも存在する可能性があり,さらに,これらの遺伝子について異常の有無の検討を重ねていく必要があるものと考えられた.また,今回の検討の際に認められた片頭痛患者のミトコンドリア遺伝子異常は片頭痛における新しい診断と治療の可能性をもちらすものと考えられた.
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