研究概要 |
GH不応性を検索する過程で、GH遺伝子の構造と機能の異常を認めた症例とGH受容体遺伝子の構造異常を認めたが機能的意義は少ないと考えられた症例の解析結果を中心に報告する。 1.症例は4歳11ヵ月男児、身長-6.1SD,GH基礎値高値で、GH刺激に対し過剰反応を呈したがIGF-Iは低値であった。血中GHBPは70.3pmol/1.Nb2細胞増殖を指標とするGH生物活性は低下していた。PCR-直接sequence法の結果GH遺伝子変異A77Cをヘテロに認めた。変異遺伝子を人工的に作成し、大腸菌で発現させたところ、GHBPの存在下で生物活性の低下が示された。変異GHはIM9細胞のGH受容体と正常に結合したが、GHBPとは高親和性を示した(IC50;野性型GHの1/6).この結果は変異GHがGHBPを占拠し、正常GHの作用がdominant negativeに低下する可能性を示唆した。 2.症例は12歳9ヵ月女児、身長は-6.17SD,GHBP;66.9pmol/1,部分的GH不応症とGH分泌不全を呈したNoonan症候群で、GH受容体細胞質ドメインの遺伝子変異P561Tをヘテロに認めた。しかし同じ遺伝子異常をもつ母親に低身長を認めなかった。そこで任意に選んだ98例(男性43例、年齢15-83、女性55例、年齢20-80)を対象にP561Tの有無をPCR-RFLP法で検討した。この結果、女性55例中11例に、男性43例中3例にP561Tの変異をヘテロに認めた。P561Tを示した女性11例では身長(cm,平均±SD)152.6±5.4,正常44例では151.3±6.2で、異常を示した男性3例168.0±5.3、正常40例では164.2±5.9で、いずれも両群間に有意差を認めなかった。以上の結果よりP561Tの機能的意義については、厳密には発現実験を必要とするが、少なくともヘテロに変異が見られた例では、成長障害との関連は認められず、多形性の一つである可能性が考えられた。
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