研究概要 |
X染色体X染色体の不活化とphosphoglycerate kinase(PGK)遺伝子の制限酵素断片長多型(RLFP)あるいはhuman androgen receptor(HUMARA)遺伝子のCAG繰り返し配列(VNTR)を指標としたクローン性解析法を造血障害の病態解析ならびに正常造血幹細胞の同定・分離に応用した。上記遺伝子がヘテロ接合体の女性造血障害の骨髄有核細胞からイムノビーズ法によってCD34陽性細胞を分離し、GM-CSF,EPO,SCFの存在下にメチルセルロース培養にて造血コロニー形成を行った。14日後に形成される個々のコロニーを倒立顕微鏡下に用手的に採取し、2分したのち、一方からはDNAを抽出してクローン性解析を行った。他方は特殊染色およびFISH法によるMDSクローンの選別に供した。その結果MDS患者の多くは末梢血顆粒球DNAがメチル化感受性制限酵素Hha 1消化によって一方のバンドが完全に消失する典型的な単クローン性を示すが、骨髄細胞由来の造血コロニーは末梢血顆粒球と同一のバンドパターンを示す優勢のクローンのほかに他方のバンドが消失するものが存在することが明らかとなった。すなわちMDS骨髄には単クローン性の病的前駆細胞のほかに非クローン性の正常造血前駆細胞が存在することを示している(Blood 84:588-594,1994)。この成績に基づきハイリスクMDSにおける化学療法後の多クローン性造血の回復の所見からも確認することができた(Leukemia 8:839-843,1994,Myelodysplastic syndrome:Elsevier Science B.V.389-393,1995)。本研究によりMDSにおいて骨髄細胞から正常造血前駆細胞の分離・増幅が可能性であることを明らかにした。
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