研究課題/領域番号 |
06807099
|
研究種目 |
一般研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
外科学一般
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山口 康雄 熊本大学, 医学部, 助手 (90253757)
|
研究分担者 |
守 且孝 熊本大学, 医療技術短期大学部, 教授 (10040213)
小川 道雄 熊本大学, 医学部, 教授 (30028691)
|
研究期間 (年度) |
1994 – 1995
|
研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
|
配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1995年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
1994年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
|
キーワード | 免疫学的寛容 / 肝移植 / 拒絶反応 / 胸腺 / Th2細胞 / CD4細胞 / CD8細胞 / OX22(CD45RC) |
研究概要 |
ラット肝移植を用いて移植前ドナー抗原胸腺内投与における免疫学的寛容状態の誘導における免疫抑制機序について検討した。ドナー抗原として抗原提示細胞である樹状細胞をドナーACI(RT1^a)ラットの腹腔動脈周囲リンパ節を切除し、5週間後に胸管内に流入する樹状細胞を採取した。5X10^6cells/mlの樹状細胞をレシピエントLEW(RT1^1)ラットの胸腺内に注入した。同時に抗リンパ球血清(anti-lymphocyte serum:ALS)(1ml)を腹腔内投与した。そして7日後にACIをドナーとして同所性肝移植を行った。その結果、移植肝は著明に生着延長した。しかし、生着期間には偏位が大きく、何らかの影響が与えられた。樹状細胞を注入した胸腺組織の病理学的検索では胸腺組織は破壊され、ドナー抗原が胸腺外へ流出した可能性が考えられた。ドナー抗原の静注投与及び腹腔内投与でも同様に、移植肝の生着延長効果が認められた。ドナー抗原の静注投与及び腹腔内投与後の組織内分布の検討では、脾臓の赤脾臓及び白脾臓に分布することが判明した。ドナー抗原を胸腺内投与する際には、末梢のallo-reactive T cellを制御するためにALSの同時投与が必要である。一方、ドナー抗原の静注投与及び腹腔内投与ではALS投与を必要としない。これはドナー抗原が脾臓内に多数存在することより、脾臓で産生される液性因子により末梢のallo-reactive T cellが制御されている可能性が示唆された。免疫組織学的検討ではドナー抗原投与群では移植肝内に多数のCD4^+T細胞が門脈領域に浸潤しているにもかかわらず、拒絶反応が進行することなく移植肝は生着延長した。leukocyte common antigenの一つであるCD45RCを用いたFACS解析ではCD4^+T細胞にはCD45RC^-CD4^+細胞とCD45RC^+CD4^+細胞の2種類のphenotypeが存在し、ドナー抗原投与群では多数のCD45RC^-CD4^+細胞が浸潤しており、これらの細胞にはIL-4及びIL-10のmRNAが誘導されており、Th2細胞であることが判明した。またドナー抗原投与群では、血中hepatocyte growth factor(HGF)濃度が有意に高かった。HGF陽性細胞は門脈領域及び脾臓の赤脾髄に存在し、HGF^+ED1^+細胞とHGF^+ED2^+細胞の2種類のマクロファージより構成されていることが判明した。migration assayではHGFがTh2細胞の遊走を増強した。CD8^+T細胞ではCD45RC^+CD8^+T細胞とCD45RC^-CD8^+T細胞が存在した。ドナー抗原投与群では、CD45RC^-CD8^+T細胞数が有意に増加した。CD45RC^-CD8^+T細胞はIL-4やIL-10のmRNAを発現しており、Th2タイプのCD8^+T細胞であると考えられた。以上の結果より、ドナー抗原投与群ではCD45RC^-CD4^+T細胞とCD45RC^-CD8^+T細胞のphenotypeが有意に増加しており、免疫学的寛容状態の誘導の機序のひとつであると考えられた。
|