研究概要 |
腹膜転移はヒト消化器癌の再発形式として最も重要な病態の一つであり、また根治の極めて難しい病態である。従って腹膜転移を征圧することにより消化器癌の治療成績は飛躍的に向上すると考えられるが、多くの精力的な研究にも拘らず、いまだ有効な治療法がないため、新しい治療法の開発が望まれてきた。本研究では、胃癌の腹膜転移に焦点をしぼり、当教室で確立した胃癌腹膜転移モデルを用いて、モノクローナル抗体結合抗癌剤の特性を実験的に解析し、更にヒトに応用した場合の安全性、動態、効果を明らかにした。 1マウス由来の抗原結合部位を決定する遺伝子と、ヒト由来の非抗原結合部位を支配する遺伝子を大腸菌に組み込み、キメラ抗体47を合成することに成功した。この抗体とネオカルチノスタチンを結合し、複合体を作製した。この複合体はin vitro,invivo(主にヌードマウス)において、ヒト胃癌に特異的に反応及びび集積し、腫瘍増殖を強く抑制することが判明した。またこれを腹腔内投与し、腹膜播種における効果を検討したところ、極めて良好な治療効果を得ることが出来た。 2複合体に更に腹腔内滞留性をもたせるために、高分子ポリマーであるポリエチレングリコールを結合させその特性を解析した。新しく合成したポリエチレングリコール結合抗体は高い腹腔内滞留性と腫瘍集積性を示すことを明らかにした。 3複合体をインフォームコンセントが得られた胃癌腹膜播種例に対して投与した。少量投与であるので著明な臨床効果は得られなかったが、副作用は認められなかった。さらに投与量を増やし検討する必要があると考えられた。
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