研究課題/領域番号 |
06807127
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
泌尿器科学
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
上野 宗久 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (60167286)
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研究分担者 |
出口 修宏 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (90118977)
中村 薫 慶応義塾大学, 医学部, 講師 (10146673)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1995年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
1994年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | 精巣腫瘍 / サイクリックAMP / フローサイトメトリー / 分化誘導 / レチノイン酸 / アルファフェトプロテイン / 清巣腫瘍 / 卵黄嚢腫瘍 |
研究概要 |
KU-MT細胞の移植腫瘍(xenograft)の病理組織像は卵黄嚢腫のtubular patternに類似した細胞構築が散見され、電子顕微鏡的にもbasement menbrane-like substanceのdepositionを認め、腫瘍が卵黄嚢腫由来であることが示された。更に、免疫組織化学では、抗AFP抗体に染色された。産生されたAFPの腫瘍マーカーとしての意義を証明するために、腫瘍重量と腫瘍中のAFPの含有量を求めたところ、相関係数(r)=0.921と強い正の相関が得られ、腫瘍重量と血清中AFP濃度間にも、r=0.944という正の相関が得られた。in vitroでは細胞散布時より培養液中に各濃度のオールトランス型レチノイン酸(ATRA)を添加したところ、細胞数は投与したATRAの濃度に反比例して減少したが、AFP値はATRAに比例して増加する傾向にあった。ノザーンブロット法でも、ATRAによりAFPのmRNAはup-regulationされていた。フローサイトメトリー法(FCM)を用いて細胞周期を求めた。ATRAはその濃度に依存して、S期細胞の割合を低下させ、増殖を抑制するとともに、細胞をG_1アレストに至らしめた。次に、RAR-α特異的アゴニストを投与したKU-MT細胞にさらに各濃度のRAR-α特異的アンタゴニストを同時投与した。RAR-α特異的アゴニストはATRAより強力に細胞数を低下させたが、アンタゴニストを添加したによりコントロール域までの回復を認めた。一方、AFP値もATRAとRAR-α特異的アゴニストの両者により増加するものの、同時投与されたRAR-α特異的アンタゴニストの濃度に比例して減少した。RAR-αの細胞増殖への関与を証明するために、FCMを用いて、BrdUの取り込み率(labeling index,LI)よりS期細胞の割合を測定した。ATRAとRAR-α特異的アゴニストにより低下したLIはRAR-α特異的アンタゴニストによりコントロール域まで回復し、KU-MT細胞においては増殖および分化がRAR-αを介して制御されていることの裏づけとなった。さらに、サイクリックAMPやその刺激物質(forskolinとcholera toxin)を培養系に投与したところ、レチノイン酸と同様に細胞増殖を抑制、AFP産生能を増強させた。KU-MT細胞に対して、レチノイン酸とcAMPはin vitroにおいて互いに異なる機序で細胞増殖を抑制する。従来の概念では、この場合、細胞数の減少とともに、腫瘍マーカー値も低下するはずである。しかし、得られた実験結果はAFP値の上昇である。この現象は薬剤の分化誘導効果により証明されるが、臨床においても、このような逆説的な変化は十分起こりうることである。腫瘍マーカーは腫瘍の動態を占うに大変有用であるが、単独で判断することは誤診を招く危険性を伴う。従って、可能であれば、その他のマーカー、特に細胞分化に影響されない非特異的腫瘍マーカーとの併用が有効と思われた。
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