研究概要 |
モルモットを用いて下丘より導出された聴性誘発反応に対する化学物質の影響を見た。先ずモルモットを固定開頭した後に下丘を明視下に置き、記録用の双極針電極をそこに刺入した。次にチューブスティミュレーターを用いて音刺激を与え、下丘よりの聴性誘発反応を記録した。この反応のなかで、下丘由来の反応成分を検出するため、下丘にリドカインを注入しこれによりアンプリチュードの低下した成分を下丘由来のものと同定した。この反応波形をコントロールとして、GABA_Aのantagonistであるbicuculine,picrotoxinを下丘に注入し、この時に得られる反応波形と比較したところ、いずれの化学物質を注入した場合も、下丘由来であると考えられる成分に著明な変化を認めた。これに対して、同様の方法で下丘に生理的食塩水を注入した場合には、このような変化は認められなかった。このことからGABA_Aが中枢聴覚路の神経伝達物質のひとつであることが推測された。さらに、bicuculineやpicrotoxinによってに生じる聴性誘発反応波形の変化はアンプリチュードの増加であり、このことはGABA_Aが中枢聴覚路の抑制系に関与していることを示唆している。 BaclofenはGABA_Aのagonistであるが、この原末の溶解液を下丘に注入することによって生じる下丘より導出された聴性誘発反応の変化が下丘成分のアンプリチュードを減少させるようなものであればGABA_Aが中枢聴覚路での抑制系の神経伝達物質のひとつであると考えられるため、現在これに関する実験を行なっているところである。
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