研究概要 |
ラット角膜の上皮剥離性の創傷後の上皮内神経の再生課程、および実質横断性の創傷後の実質内角膜神経の再生課程について免疫組織学的方法をもちいて光学的顕微鏡のレベルで検討する事を当初の目的として実験を開始した。Ratの眼球を摘出し、強角膜片を作製、免疫組織学的染色を施し、実質および上皮内の神経をwhole mount標本で観察し、ヒトneuron specific enolase (NSE)、ウサギおよびヒトcalcitonin gene related peptide (CGRP)、tyrosine hydroxylase (TH)等の神経マーカーについて染色条件を検討した結果かなり安定した染色結果を得た。しかしラット眼では手術操作が困難である事から実験動物をモルモットに変えて実験を行った。正常角膜および創傷作成後の角膜についてラットと同様に免疫組織学的染色を試み、上皮内の角膜神経の定量的観察が可能であるような免疫組織学的染色条件を求めたが、NSE,CGRP染色などある程度の染色結果は得られるものの染色結果は不安定であり、ラットに於ける染色性より劣る結果しか得られず定量適観察には不適であった。また交感神経線維はまれにしか観察されず、ほとんどの角膜神経線維は三叉神経由来であると思われたので、神経線維を交感神経と知覚神経に分離して定量する事の意義は高くないと考えられた。したがって定量的観察に限っては免疫組織学的染色法を用いる事の意義も薄れた。 そこで渡金法を再検討する事とし、渡金法の欠点である標本の低保存性を改良する事とした。すなわちウサギ角膜をEDTA/BSS溶液中でincubationし、角膜上皮シートを作成し渡金染色を施し、脱水、透徹の上ホールマウントとする方法であり、この方法で最近では数カ月間にわたり神経終末の定量的観察が可能な標本が得られるようになった。現在正常角膜の上皮内神経終末の密度の測定をほぼ終了しており、再生神経の測定を計画中である。
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