研究概要 |
1.老化促進マウス(以下SAMと略)の繁殖と維持:平成5年に京大胸部疾患研究所の竹田教授より配布を受けたSAM P/1(老化促進種)とSMM R/1(対象種)の2系統のSAMは,大阪大学歯学部動物舎内にて順調に繁殖し,現在各系統約100匹のマウスを維持しつつ,常に実験に供試できる体制を確立している. 2.歯周病原菌由来のビルレント因子の精製:嫌気条件下で培養したPorphyromonas gingivalis(Pg)381株(20L培養)より,熱フェノール水法に基づきリポ多糖(LPS)を抽出した.最終精製LPSは,乾燥重量で約15mgでこれを生物活性特性の検定を行なったところ,同菌種のLPSの特徴(HeJマウスの対する応答性)を有していることがわかった. 3.SAMの免疫担当細胞と歯周病原菌由来ビルレント因子との反応:老化状態にあるSAM P/1マウス,その対照種であるSAM R/1マウス,さらにSAMマウスの由来系統になるAKR/Jマウスの3種のマウスより脾臓細胞を摘出ののち,2.で精製したLPSで刺激し,マイトジェン活性測定系にてそれら系統による反応性の違いを検討したところ,次のような結果を得た.(1)SAM P/1マウスの脾細胞は月齢の上昇に伴い,PgLPSの刺激に対して著明な反応性の低下を示した.一方,SAM R/1マウスでは加齢に伴う明確な変化は認められなかった.(2)PgLPSの多クローン性B細胞活性化の反応性でも,SAM P/1では加齢に伴い,有意の低下が認められたのに対し,SAM R/1では変化を認めなかった. 4.SAM由来のマウス組織の老化に伴う形態学的変化:SAM P/1,SAM R/1,AKR/Jマウスより脾臓,胸線,唾液線、歯肉組織を抽出し,HE染色にて,各臓器の加齢に伴う変化を検討したが,各種各臓器とも,明確な変化は認めなかった.
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