研究概要 |
1.ヒトUMP合成酵素cDNAをプローブとしてヒトゲノムライブラリー(EMBL3-Sau3ALcut)をスクリーニングしたところ6個の陽性クローンが得られた。各クローンの制限酵素地図はすべて同じ地図上にのっていたので、UMP合成酵素の遺伝子はヒトのゲノムにおいて単一コピーで存在すると考えられた.UMP合成酵素の遺伝子は全長約15kbであった。蛋白翻訳領域より約1kbの核酸塩基配列を決定したが、開始コドンの5'側はCpGが密で典型的なTATAボックスやCAATボックスの配列はなかった。これらはハウスキーピング遺伝子の特徴と合致している。エクソンとイントロンの境界はすべてGT/AGルールにしたがっていた。 2.正常UMP合成酵素cDNAをバキュロウイルスベクター(Invitrogen,pVL1392)にクローン化し昆虫細胞内でUMP合成酵素を発現させた。SDSポリアクリルアミド電気泳動で分子量およそ52,000のたんぱく質が全たんぱく質の50%の量で認められた。そこで細胞懸濁液にたんぱく分解酵素阻害剤を加えた後超音波破砕し、遠心した上清をFPLCシステムで精製した。ヒドロキシルアパタイトカラムでは素通りの画分にUMP合成酵素活性が溶出されたのでその画分をさらにMonoQ陰イオン交換樹脂カラムにかけた。UMP合成酵素は0.2MのNaCl付近の画分に溶出され、SDSポリアクリルアミド電気泳動でほぼ単一バンドであった。 3.オロット酸尿症の患者で同定された核酸塩基配列の変異をUMP合成酵素cDNAに導入しバキュロウイルスベクターに組み込んだ。発現された変異を含むUMP合成酵素のうち父由来の変異においては同酵素活性の低下が示された。今後は母由来の変異についても検討する予定である。
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