研究概要 |
本研究は資源環境経済学の分野で先駆的業績をあげたジョージェスク=レ-ゲンにより提唱されている生物経済学の立場から貿易と環境の問題について考察することを目的にする。特に、農産物の長期大量輸出が人類の長期的生存の基礎的諸条件を脅かす可能性が高いことを示す。経済学および熱力学、生態学を利用する学祭的方法論とジョージェスク=レ-ゲン生物経済学の立場を援用しながらこの問題を考察する。 まず準備として、農産物輸出の生態環境への長期的影響を分析する前に、(1)農業と工業の本質的差異 (2)世界貿易構造の現状と環境への影響、の2点について考察した。(1)については、Capitalism,Nature,Socialismというレフリーつきの専門雑誌の1994年3月号に“Farming versus Manufacturing"という論文が掲載された。(2)については、1993年12月ポーランドでの国際会議(International Comference : Training of Experts for European Cooperation on Protection of the ENvironment and Promotion of Sustainable Development)で“Development,Ecological Degradation and North-South Trade"を発表し、1994年12月にこの国際会議のプロシ-ディングとしてクラコフ大学から出版された。 これをさらに発展させ、“An Unorthodox Views on Development,Ecological Degradation and North-South Trade,"という論文を専門雑誌Review of Social Economyに投稿した。まず、過去および現在進行中の環境問題の類似点と相違点を明らかにするとともに、2種類の効率性を導入し、そのうちの片方の効率性の過度の追求の結果として環境破壊が進んでいることを述べる。それから、標準的な貿易理論を批判的に考察した後、南北貿易に対する生態経済学的接近を試み、持続的発展のための3つの提案を考える。さらに、人間と自然の関わりを歴史的に考察し、環境破壊の原因は、人類が進化のスピードを速め、身体的発展(exosomatic mode of evolution)の様式を選択したことから必然的におこったことを理論的にあきらかにした。
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