研究概要 |
熱ルミネッセンス(TL)強度に基づいて定量的に隕石の岩石学的タイプを判定することは、非平衡コンドライトなどの弱い熱的な影響を受けた隕石の分類に極めて有効である。平成6年度に完成させたTLフォトンカウンティングシステムには、フィルタや光電子増倍管を交換することで検出波長領域を従来のSearsらによる研究(Sears et al.,1980〜)で詳しく調べられている青色領域だけでなく黄色・赤色領域にまで広げられ、また測定開始温度も室温から液体窒素温度にまで下げることができ、より多角的に隕石のTL特性を調べられるという長所がある。 平成7年度には、完成したTL測定システムを用いて、隕石中で最も重要なTL発光体である長石類(小滝産Albite,余市産Anorthite,長谷産Orthoclase)のnaturalとinducedのTL特性(グロー曲線)と測定方法・手順を詳細に検討した。コバルト60-γ線照射とTL測定は、京都大学原子炉実験所で計10日間行った。特に今回は、ガンマ線照射量の効果、照射後の測定開始までの待ち時間の長短の効果、及び同一条件での繰り返し測定による経時変化(試料の黒化による)について詳しく調べ、長石類のTL測定方法の詳細を詰めた。フィルターを交換して青色〜黄色領域でのTL特性も調べた。また、液体窒素を満たしたデュワ-中でガンマ線照射を行った後に、液体窒素温度からのTLグロー曲線の測定を小滝産Albiteについて行った。 その他の研究として、カソードルミネッセンスによるコンドリュールの分類、平衡エンスタタイト・コンドライトの岩石学的研究、エンスタタイト・コンドライトとオ-ブライトの赤色TL・CLの研究、ユ-クライトのTL・CL研究、南極隕石のペアリング、エネルギー最小化法によるC-H-O系の化学平衡計算などを行った。
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