研究概要 |
本研究の目的は,地球型惑星の大気循環の計算可能性を探ることにあった.目標は,太陽放射量の違いによる暴走温室状態の発生を循環場の構造まで含めて計算することであった. 水蒸気を赤外放射に対して灰色とみなす簡略な放射コードを導入し,太陽放射量を1350W/m^2〜1800W/m^2のあいだのいくつかの値に設定して,放射対流(平衡)状態を計算することを行なった.鉛直層数を16にした通常の場合には計算は発散することもなく,特に1次元放射対流平衡モデルで予想される限界射出量を越えた1800W/m^2では系から射出される外向き放射量が時間とともに減少する暴走温室状態と見られる状況が得られた. 鉛直層数16のモデルでは実は太陽定数が1350W/m^2程度の時の対流圏が再現できる分解能でしかない。1800W/m^2での結果をより確かなものにするために分解能を32にして再度計算を試みた.この層数は,1次元放射対流平衡モデルを用いた赤外放射計算がおおむね正しく行なえる最低限の数を調べ,導入したものである. 残念ながら,現時点では分解能32のモデルの計算には成功していない.長時間積分ができないでいるためである.原因は成層圏に伝搬する内部重力波の活動が数値コードの能力を上回っているためと想像している.興味深いことに赤道域上層は必ずスーパーロ-テーション状態となる.問題の解決に向けてより簡略な2次元対流実験の再試行を行なった.
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