研究概要 |
加齢に伴い免疫応答能は低下する。この機能低下は新たに侵襲する細菌等外来抗原のみならず、免疫記憶が充分に成立していると考えられる常在菌に対してさえも認められる。本研究では、老齢マウスでみられる常在菌外毒素(SEB)に対する低応答性と致死性(ショック死)の増大の原因をSEB反応性T細胞(Vβ8T細胞受容体(TCR)陽性)の動態を調べる事によって明らかにするとともに、正常生理状態で辿るT細胞の運命についてin vitro混合培養などにより検討した。SEBに反応するT細胞から生ずる腫瘍壊死因子(TNF)が致死性の原因であるという報告をも踏まえて以下の結論を得た。 1.齢に拘らず、SEB投与によって多くのVβ8^+T細胞はアポトーシスにより消失するものの、若齢個体ではショック死に至らない。そこに残存するVβ8^+T細胞は細胞内複雑性が増し、増殖反応を示す。一方、老齢個体ではその様な細胞はみられない。 2.老齢個体のVβ8陽性T細胞は、細胞数は多いものの、TCR濃度は低い(MAD,1995,in press)。TCR濃度自体は、SEB刺激により増大するものの細胞増殖には至らず、逆にアポトーシスにより死滅する。 3.この様な細胞死は若齢T細胞との共存などによる環境要因の改善などにより回避できたが、機能発現(マウスのショック死)は阻止できなかった。 4.長期に亘る抗原刺激によりT細胞はTNF産生など機能が専門分化し、細胞死(アポトーシス)の機構を存続させたまま増殖能を失う終末細胞へと定向的変化を辿ると考えられる。--投稿準備中。
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