研究概要 |
本研究の成果は下記の2章にまとめた。 1。生漆と鉛及び銅粉末との反応 生漆は特定の金属に触れると着色するため,発色に大きな影響を与える。そこで,本研究者はすでに生漆に及ぼす鉄,亜鉛,マンガンの影響を明らかにしていた。本報では,さらに鉛,銅金属粉末を加えて反応性を検討した。反応性は反応物ノアセトン及びメタノール抽出を行い,溶剤可溶となった金属量より求めた。静置反応,撹拌反応ともに鉛が活性であったが,銅はほとんど活性を示さなかった。鉛はメタノール可溶部よりアセトン可溶部に多く取り込まれていたが,銅では両部にほとんど差が認められなかった。これらは金属はウルシオールとは反応せず,反応にはラッカーゼ酵素を必要とする結果が得られた。 2。生漆と混合金属粉末との反応 本研究では,鉄,鉛,マンガン,亜鉛及び銅金属粉末,及びこれらの金属の2種混合粉末の生漆に対する反応性を撹拌反応を行って検討した。金属単独では,鉄,鉛,マンガン,亜鉛,銅の順で反応性が低くなるが,鉄に鉛,マンガンまたは亜鉛が混入されると鉄の反応性が低くなり,また,鉛にマンガンまたは亜鉛を混入すると,鉛の反応性が低くなった。他の金属のマンガン,亜鉛,銅の組み合わせでは,金属単独の時の反応性と同じで,その順位は入れ替わることはなかった。反応生成物の分析結果から,特にマンガンを用いた場合に酸化反応や核置換反応が起きていると推定される結果を得た。
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