研究概要 |
回転する同軸二重円筒間の流れ(テイラー・クエット流)における流れの遷移現象は,これまで,様々な方法で研究されてきたが,遷移が起こる際の流れ場全体の定量的計測は,これまで全く行われていなかった.この流れに対し,本研究代表者が開発した超高速NMR映像法を用いた流れ場の計測法(NMR velocimetry)を適用することにより,テイラー・クエット流れにおける遷移現象の動的計測が,流れ場全体に関して初めて可能となった.すなわち,外円筒を静止し,内円筒を静止状態から急激に回転させ始めたときの円筒間に発生する流れを,回転軸を含む断層面において,200msの時間間隔で連続的に観測することにより,内円筒から外円筒へ向かう流れの発達(回転軸方向に短い波長をもったテイラー渦の生成),そしてその渦の振動を伴う不安定化を経て,定常状態(定常テイラー渦)へ移行していく過程を,初めて明瞭に可視化することに成功した.また,その不安定化のプロセスが,理論的に予測されていたテイラー渦の回転軸方向の波長の不安定性によることが結論づけられた.このように,超高速NMR映像法を用いて,高い時能で流れ場を二次元的に計測する手法が,カオスや乱流などの定常的な流れのみならず、非定常流れの計測にもきわめて有効であることを示すことに成功した.
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