研究課題/領域番号 |
06836004
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
血管生物学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 元夫 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教授 (90240738)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1994年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | ヘパラナーゼ / ヘパラン硫酸プロテオグリカン / 基底膜 / 血管内皮細胞 / メラノーマ / 血管新生 / がん転移 / bFGF |
研究概要 |
血管壁の基本骨格の維持と物質透過の制御に働く血管基底膜には、種々の増殖因子やサイトカインが蓄積されている。これらの因子は、タイプIVコラーゲンやラミニンとともに基底膜を構成するヘパラン硫酸プロテオグリカンの糖鎖部分またはコアペプチドに結合しており、組織の損傷や腫瘍組織における血管新生誘導などの際に遊離されて、血管内皮細胞等の正常細胞およびがん細胞の遊走と増殖を誘起する。血管内皮細胞はヘラパン硫酸プロテオグリカンを産生して基底膜を構築する一方、この基底膜の代謝回転に働く酵素としてへパラン硫酸プロテオグリカンの糖鎖を分解するヘパラナーゼを産生する。本研究では、血管新生における血管内皮ヘパラナーゼの役割について解明することを最終目標とした。今年度は、樹立したマウスの肺および肝の毛細血管内皮細胞がつくる細胞外マトリックス中の硫酸化プロテオグリカンの特性を、^<35>S-硫酸と^3H-グルコサミンで生合成標識して化学的、酵素学的に分析した。いずれの内皮細胞の産生するプロテオグリカンも、85%以上が高硫酸化型のヘパラン硫酸プロテオグリカンで、7.5%から15%のコンドロイチン4硫酸も検出された。次に、ヌードマウスにおいて肺または肝特異的転移性をしめすヒトA375メラノーマとKG-2腎がん細胞の亜株細胞を用いて、それぞれの対応する臓器由来の血管内皮細胞への接着と細胞外マトリックス硫酸化プロテオグリカンの分解誘導を解析した。その結果、肺転移性メラノーマ細胞と腎がん細胞は肺血管内皮細胞へのより選択的接着と浸潤を示し、ヘパラン硫酸プロテオグリカンの分解を著しく促進した。他方、肝転移性メラノーマ細胞は肝類洞内皮細胞に対しコンドロイチン硫酸を介する接着を示し、基底膜からはヘパラン硫酸プロテオグリカンの分解遊離が認められた。血管内皮細胞によるヘパラン硫酸プロテオグリカンの分解はメラノーマ細胞および腎がん細胞の培養上清によっても誘起された。これは中和活性を有する抗bFGF抗体により部分的に抑制され、両がん細胞ではbFGFが産生されることが免疫染色で確認された。したがって、血管内皮細胞によるヘパラン硫酸プロテオグリカン分解を誘導するがん細胞因子の一部はbFGFであることが推察され、bFGFによるヘパラナーゼの産生誘導の機構について解析を進めている。
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