研究概要 |
本研究では以下に述べる4つの重要な成果を得ることができた。第1に,3種類の血小板由来増殖因子(その膜レセプターはチロシンキナーゼドメインを有する)がいずれも正の血管新生調節因子であることを明らかにした。第2に,チロシンキナーゼ障害物質であるハービマイシンAが血管新生阻害作用を発揮するのに不可欠な分子内官能基を決定した。次に,これまでの研究実績を基盤にしてエポキシド基は血管新生阻害物質を探索する際の指標になるのではないかと考え研究したとこす、この官能基を持つ微生物代謝産物リゾキシンが血管新生阻害作用を発揮してすることを突き止めた。In vitro実験は,リゾキシンが複数の血管内皮機能(プラスミノーゲンアクチベータ-産生,増殖,遊走,管腔形成)を阻害することによって,血管新生阻害作用を発揮していることを突き止めた。同様に,エボキシド基を有する別の微生物代謝産物デプデシンも血管新生を抑制することを見出した。今後、エポキシド基がこれらの微生物代謝産物による血管新生阻害に関与しているかを調べるために、この官能基を修飾してその活性がどのようになるかを検討したい。最後に,微生物代謝産物サイトゲニンは漿尿膜上の血管新生,すなわち正常な血管新生に影響を与えないが,経口投与で腫瘍血管新生(異常な血管新生)を抑制することを明らかにした。 これらの知見を下に、血管新生は現在十分な治療法がなく、そのため新しい方法の確立が切望されている癌などの血管新生病の標的であることを提唱した。
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