研究概要 |
本研究は,1993/94年の南氷洋における調査捕鯨において日本鯨類研究所が捕獲した雌雄(各々31,22頭:計53頭)ミンククジラを用いて以下の研究結果を得た。 1)形態及び内分泌学的検討:卵巣の重量,大きさおよび卵胞数,黄体の有無(その重量)を測定した。卵胞は直径により,小(<5mm),中(5-8mm),大(>8mm)に分類し卵胞内卵子を回収,固定,染色後その核相を検査した。また,血清中および卵胞液中のステロイドホルモン(P,E,T)値を測定した。その結果,卵胞内卵子の直径は175-191μmで卵核胞崩壊期の卵子が最も多かった。妊娠雌の血清中p値(4.3±0.5ng/ml)は,非妊娠成熟雌(2.3±1.4ng/ml)および未成熟雌(測定範囲以下)より有意に高く,卵胞液中のE_2値により発育および閉鎖卵胞を区別できることが示唆された。一方,雄の血清中E_2(8.5±1.8ng/ml)は雌とほぼ同様に高く,ウマやブタのようにE_2も精巣内の精子形成機構に深く関与していると思われた。 2)精巣上体および精管内精子の回収と凍結保存:回収された精子は(21頭),合成希釈液で希釈,冷却,凍結保存(-80℃)され,冷固後液体窒素に保管した。融解後10頭について運動精子を確認できた(〜40%).本成果は,少なくともヒゲクジラ類,ナガスクジラ科動物では世界的にも初めてである。また,血清中E_2と凍結融解精子の運動率(γ=0.54)および生存率(γ=0.53)との間に有意な(ρ<0.05)正の相関が見られた。 3)血清中の一般成分として,グルコース,コレステロール,Na,K,Cl,Caなど10項目を測定し,雌雄間,および雌クジラの妊娠/非妊娠,成熟/未成熟間の差異を検討したが,有意な差は認められなかった。
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