研究概要 |
平成6年度の研究により、海洋細菌V.alginolyticusのナトリウムポンプ遺伝子(=NQR)のクローニングに成功し、その全塩基配列が明らかになった。その結果nqrオペロンは6つの連続した遺伝子、nqr 1-6からなり、そのうちのnqr 1,3および6に対応する蛋白質は、すでに精製したNQR複合体に含まれるα,γ,βサブユニットとして解明されている。さらにこれ以外にnqr 2,4,5に対応するきわめて疎水性の高い中性ないし塩基性の蛋白質がまだ3種類も存在することが分かった。 平成7年度には、この塩基配列に基づき各サブユニットに対応するDNAプローブをPCR法を用いて作成し、中度好塩細菌に存在するナトリウムポンプ遺伝子の探索をおこなった。すでに生化学的な実験によりナトリウムポンプの存在が確認されている中度好塩細菌5種を選び、各々の染色体DNAを分離後、サザンハイブリダイゼーション法により遺伝子の相同性を調べた。Vibrio costicolaは、nqr 1,3,5,6のN末又はC末領域に対応する4種のプローブすべてと反応したことから、V.alginolyticusとほぼ同じ遺伝子を含むオペロンを構成していることが分かった。Halovibrioはnqr 5,6に対応するプローブと反応したことから、V.costicolaの次によく似た配列をもっていると思われる。ところが上記2種の菌に比べると、Pseudomonas beijerinckii,P.halosaccharolytica,Deleya halophilaはいずれのプローブとも殆ど反応しなかった。すなわち、これら3種の菌については、少なくとも今回用いたプローブの範囲ではDNAの相同性は非常に低いと思われる。従って現時点では、DNAの相同性の面から少なくとも2種類のナトリウムポンプが存在する可能性が考えられる。
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