研究課題/領域番号 |
06839028
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
海洋生物学
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研究機関 | 国立科学博物館 |
研究代表者 |
山田 格 国立科学博物館, 動物研究部, 主任研究官 (70125681)
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研究分担者 |
木田 雅彦 岩手医科大学, 医学部, 助教授 (40186276)
遠藤 秀紀 国立科学博物館, 動物研究部, 研究官 (30249908)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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キーワード | コイワシクジラ(ミンククジラ) / 鯨類 / 呼吸器 / 肺 / 比較解剖学 / 系統発生 / 水中適応 |
研究概要 |
海棲哺乳類の特異性についてはすでに多くの研究・著作があるが、一般に海棲哺乳類の適応の程度がいかに進んでいるかに力点がある。われわれは鯨類の呼吸器系について検討をおこなうためコイワシクジラ(Balaenoptera acutorostrata)胎児(105〜118cm)の肺を解剖した。肺実質を除去して気管支の分岐ならびに気管支系の肺動脈との位置関係を観察する方法と、薄切して細気管支の分岐方向を確認する方法をもちいた。中久喜(1980)によれば、細気管支は気管支から、背側、腹側、内側および外側の系列をなして長軸方向に分節的に分岐する。 本研究の結果、コイワシクジラの気管気管支は気管支から直接分岐し、右肺の肺尖部に分布する。右の気管支からは外側と背側にそれぞれ4本、内側に1本の細気管支が分岐する。左では外側に5から6本、背側に4本の細気管支が分岐する。左の肺動脈は左の気管支と最初の外側への細気管支をまわって背側に向かい、気管支の背側面に沿って各細気管支に分布する。右の細気管支は近位部で大きな枝を分けた後、右の気管支と第三外側細気管支をまわる。近位で分岐した2本の枝はさらに分岐して、気管気管支と第一外側細気管支に分布する。 鯨類の肺に関する詳細な研究は例がなく本研究の結果を比較考察することは困難であるが、本研究の結果コイワシクジラの気管気管支型は中久喜のD-II型に分類できる。哺乳類の肺動脈は一般に両側で第一外側細気管支を腹側から背側にまわる。ガンジスカワイルカにおいてもこの関係は確認した(Kida,1990)。しかし、コイワシクジラの右肺動脈は第一ではなく第三細気管支をまわる。このように、肺動脈の経路が異なっていることのもつ意味をさぐるために、その他のヒゲクジラの気管支分岐の状態と肺動脈の位置関係に関してさらなる研究をおこなう必要がある。中久喜(1980)の気管支分岐の基本モデルが鯨類にもそのまま適応できる。偶蹄類で知られている右の気管気管支が鯨類でも認められたことは、分子系統学などの結果と対比しても非常に興味深い。呼吸器は鯨類が水中に生活の場を移した際に大きく変化したと考えられるが、系統関係と適応のための機能的な変化とを見分けるべくさらに所見を検討していかねばならない。
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