研究課題/領域番号 |
06851005
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
美学(含芸術諸学)
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
滝 一郎 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (80242072)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1994年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | ベルクソン / ジュフロワ / 美学 / 表現 / 共感 / 想像 / 神話 / 直観 |
研究概要 |
1 ベルクソン美学研究の一環として、1992年に公刊されたベルクソン美学講義を取り上げ、その意味を思想史的状況の下に、またベルクソニスム全体との関連の下に探ろうと試みた。その結果、フランス十九世紀折衷主義のクザンとその弟子のジュフロワの美学思想がベルクソン美学講義のひとつの源泉になっていることが明らかにされた。とくにジュフロワの『美学講義』(1843)がベルクソンの美学思想に与えた影響は大きい。ジュフロワの考える美の哲学の原理は、客観における「表現」と主観における「共感」の二項から成るが、ベルクソンは自らの美学講義で基本的にこの概念枠を踏襲している。さらに、主観を客観のうちに移し入れるというジュフロワ的共感の構造は、ベルクソンの哲学的方法としての直観の構造と同様である。しかし、ジュフロワ的共感においては主客の断絶が残されるのに対して、ベルクソ的直観においては表現が即ち共感であるような形で主客の合一が果たされるという点で両者は異なり、この点に直観の美学としてのベルクソン美学のもつ、レアリスムとイデアリスムとの対立を乗り越える理論的射程を認めることができる。 2 ベルクソンにおける想像の問題を笑い・夢・神話といふ三つのトポスにおいて取り上げ、ベルクソンの思想の中では受動性の勝った再生的想像に属するこれらの主題のうちに能動性の勝った創造的想像の契機が胚胎していることを示し、それによって客観から主観への、あるいは物質の側から精神の側へと通じる道が(外側から見れば)非連続的でありながら(内側からみれば)連続的であることを示した。これはベルクソン美学の本質をなすと思われる創造と受容との原理的相即、観想・行為・制作の起源的同一を、静態的なイマージュから力動的な直観へ向かう方向において論証しようとする試みであり、これまであまり注目されて来なかったベルクソン美学の思想的意義に光をあてるものである。
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