本年度は、基礎的な資料の収集と、その読み込みを行った。 本年度、収集資料にあたって対象としたのは、中・上流家庭の幼稚園児童の母親向けの教育雑誌である。時代区分的には、大正時代から敗戦直後までを中心としている。資料の収集の方法としては、学内に所蔵されていない古書を購入する、手元におきたい基本文献を図書館から借りてコピーを取る、近辺の図書館には所蔵していない資料を国会図書館で閲覧する、といった順序で行った。 1年間という限られた期間で得られた研究成果はまだまだ少ないが、日本の教育雑誌のはしりである『育児雑誌』『幼児の教育』を読み込むことができたのは大きな収穫であった。当時の社会の通念では、どのような世代間コミュニケイションが望ましいとされたか、という観点に着目しながら読み込みを行った。そのさい、[(1)乳幼児観(2)望ましい母親像(3)望ましいこどもの徳性]をとくにキーワードとして抽出に心掛けた。 今後は、新聞の読者投稿欄や自伝、歌謡曲の歌詞・乳幼児向けの絵本やテレビ番組・映画や絵画・ライフコースの聞き取り調査などによって、踏査する資料・情報の内容と時間幅をさらに広げ、得られた知見をもとに、時系列のデータへとまとめてゆきたいと考えている。
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