1 モダン・ツーリズムの考えにたてば、観光資源である自然は、多くの観光客が訪れ楽しめるように、それを変形、加工、整備する。しかし、観光公害をはじめさまざまに噴き出したひずみは、モダンへの反省を生み、その結果、もっと自然と調和した観光形態であるエコ・ツーリズムがあらわれた。 2 エコ・ツーリズムの実施状況の調査の結果、エコ・ツーリズムは必ずしも旅行業者によって実施されるのではなく、また小グループによるクラブ的運営、個人運営によるものが数多く存在することがわかった。 3 その内容は、野外キャンプ、無人島滞在、野草料理講習、ログハウス製作講習、炭焼き体験、バ-ド・ウォッチング、森林ハイキング、古代生活体験、密林探検等、多岐にわたる。なかでも近年人気のあるのは、カヌー・ツーリングである。これを中心に、研究者自信が参与観察をおこなった。 4 ツアー参加者各自がカヌーに乗って、インストラクターと一緒に、数〜数十キロの川下りをするのがリバー・ツーリングだ。途中の川原でキャンプをしながら数日かけるものもある。北海道・釧路川、高知県・四万十川はカヌー・ツーリングの2大メッカを言われ、ツアー客たちの「聖地」となっているのがわかった。 5 カヌーに乗るには若干の技術がいるし、一般に、エコ・ツーリズムは普通のパッケージ・ツアーに比べて多少の危険を伴う。その意味で、マス・ツーリズムを基盤とする近代観光の精神からズレる。近代観光の発達の果て、行き着くところには、ある種の分化が待ち受け、新たな局面での連帯と統合をせまるだろう。 6 モダン・ツーリズムにわかる選択肢として登場した、エコ・ツーリズムを典型例とすると、ポストモダン・ツーリズムは、人類にとって何が望ましい観光であるかを模索する、適正観光の考えに通じていくものである。
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